1.2 連立1次方程式(2)

 この節では,連立1次方程式の解についての「クラメルの公式」を学ぶ。ただし,証明等については線形代数の講義で行うこととし,ここでは計算のやり方のみを説明する。

 クラメルの公式は,一般のn元連立1次方程式に対しても成立しているが,ここでは3元連立1次方程式までを示すこととする。

 連立1次方程式を解く場合,係数が数値ばかりであるならば,1.1節で学んだ代入法や加減法で十分解けるが,係数に文字が含まれる場合には計算が非常に煩雑になる。この場合,上で述べたクラメルの公式が威力を発揮する。たとえば,1.1節の例題6をクラメルの公式を用いて解いてみよう。

解説:電気回路では1.1節の例題6で与えたように,回路の枝を流れるものとして電流を扱う(枝電流)こともできるし,ここで与えたように,閉回路を一巡するものとして電流を扱う(環電流)こともできる。枝電流と環電流は,たとえばこの例題のブリッジ回路においてR5を下向きに流れる電流I5は(Ia - Ib)に等しくなるとの関係にある。

 例題4の解答においてを行列式の定義通りにδを求めると,

となる。これを展開してまとめると,解答に示しているδ,すなわち,

となる。この計算は少々面倒である。しかし行列式の性質を使ってδを求めると,この面倒な計算を行うことなく直接が求められる。このようなことは線形代数の講義で解説される。