2.3 加法定理

 三角関数の定義より,sin, cos, tanについて次の公式が成り立つことが解る。

 また定義より,あるいはグラフを見ることにより,cosx = sin(x + π/2)であること,すなわち余弦関数(cos)は正弦関数(sin)の位相がπ/2だけ進んだものであると理解することができる。

 一般に三角関数について,位相がπ/2の整数倍だけずれたとき,次の変形公式が成立する。

 その他三角関数についてはいろいろな公式が成立しているが,その基礎となる最も重要な公式は,次に示す加法定理である。

証明

 まず,0 ≤ α ≤ 2π, 0 ≤ β ≤ 2πの場合について示す。

 図のように単位円周上に点A, B, C, Dをとる。各点の座標を求めると,A(1, 0), B(cosα, sinα), C(cos(α + β), sin(α + β)), D(cosβ, -sinβ)となる。

△OACと△OBDは合同であるから,AC = BDである。

ここで

よって

ここで より

条件より,sin(α + β) ≤ 0, sinαcosβ + cosαsinβ ≤ 0であるから

またにおいて,βのかわりにπ/2 - βを代入すると

よって

において,βのかわりにπ/2 - βを代入すると,同様の計算で次式がでる。

では次にα, βが一般の角でも定理が成立することを示す。

 θ1, θ2 を0以上π/2以下の角として,α = θ1 + n1π/2, β = θ2 + n2π/2と表しておくと

右辺は,n1 + n2がどのタイプの整数かにより,公式の4つの場合に分かれる。

例えば,n1 = 4m + 2型,n2 = 4m + 3型とすると,n1 + n2 = 4m + 1型となり

このとき

よって

が成立している。

 残りのsin, cosに対する公式も,同様に考えればよい。tanの加法定理については,sin, cosの加法定理を利用して求めることができる。

問1 加法定理の証明において,

(1) *1, *2の部分を計算せよ。

(2) n1 = 4m + 1型,n2 = 4m + 2型 とするときcosの加法定理が成立することを確かめよ。

問2 sin, cosの加法定理を使って,tanの加法定理を示せ。

問3 cos(7π/12)の値を求めよ。