3.3 複素数の電気における応用

 交流回路では,電圧・電流は時間の関数であり,回路の各部の電圧・電流の関係を表す式は,一般には微分・積分を含んだものとなる。しかし,電源の角周波数がωである正弦波交流回路で,定常状態にある回路を考える時には,正弦波をフェーザ表示することで,微分・積分を取り扱うことなく,回路の各部の電圧・電流を決定できる。

 定常状態にある正弦波交流回路において,抵抗(レジスタンスR),コイル(インダクタンスL),コンデンサ(キャパシタンスC)に電流Iが流れるときに生じる各素子での電圧降下はそれぞれ以下のように与えられる。ただし,I, Vは電流・電圧のフェーザ表示,ωは電源の角周波数である。

回路素子の性質が複素数で表されることになり,計算が容易になる。

 交流回路において,回路素子の特性(インピーダンスと呼ぶ)は,Z = V/Iの関係で表される。これは交流回路に拡張された「オームの法則」と呼ばれる関係である。